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一週間後の早朝。私は大翔の実家へ行く為に、羽田空港から那覇行きの飛行機に搭乗していた。
大翔の両親とは食事会の後、結納でお会いしていたが、彼の実家に行くのは今回が初めてだった。
私は飛行機恐怖症で飛行機に乗るのも初めてだった。
とは言え彼の実家に行く為には飛行機に乗るしかないから、今回は勇気を振り絞って那覇へのフライトに搭乗したんだ。
私は飛行機に乗っている間、ずっと大翔の手を握り締めていた。
「澪、知ってる? 飛行機で墜落事故に遭う確率は、毎日十時間飛行機に乗っても四三八年に一回だって。今日は那覇まで二時間ちょっとだから、八十万年に一回の確率だよ。自動車よりも余程安全」
私も頭では分かっていたが、心臓が言う事を聞いてくれない・・。怖くて、物凄いドキドキで、彼の手を握っている手も冷や汗が一杯だった。
那覇行きのフライトは羽田空港を離陸して二十分程で水平飛行に移った。客室乗務員による飲み物サービスが始まった所で、私のドキドキは少しだけ治って来た。
その時だった。突然、ガタンと言う音と共に頭上から何かが落ちて来た。
「えっ?」
目の前に現れたのは酸素マスクだった。大翔の前にも同じ物が落ちて来ている。
身体が硬直した。これ・・同じシーンを・・憶えている・・。
私の心臓の鼓動が限界を超えて高まる。
同時に録音されたアナウンスが流れ始めた。
『エマージェンシーデセント エマージェンシーデセント』
『マスクを強く引いて、鼻と口を覆って』
『タバコを消して ベルトを締めて」
『ただいま緊急降下中』
唐突に視界が真っ白になり私は意識を失った。
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