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「いらっしゃい! 四人様でいつものテーブル席かい?」
「大将、四人様でカウンター席!」
日が短くなる秋の高校帰り、わたしたちは、一皿、基本百円の回転寿司“すし天竜紅鳶店”の閑散とした店内に入る。今日は週に一度の一皿、税抜き九十円の日だ。午後のお店が休憩時間に入る三十分前だ。
閑散として店内にほかのお客さんがいないことや、レーンが回っていることは、出入り口前のガラス窓から四人で覗いて確認済み。
目の前をわたしが大好きな、お皿に乗ったハマチが流れて行く。大将がわたしのために、流してくれたんだろう。
紅鳶高校の制服姿で、四人が並んでカウンター席に座る。わたしはポケットに手を滑らせた。
アイマスクを一つ、カウンターの上に置いた。メモを取り出して読み上げる。
「ルールを再確認するねー。四人が交代でアイマスクをします。そして、アイマスクをした状態で、流れてくるお皿を取ります。そのお皿を間食してください。一回パスしたらその時点で負け。また、取ったお皿を食べきれなくても、負け。ムリに食べずギブアップしてね。えー。最後に残った一人が勝者になります。ちなみに、“すし天竜”さんは、全てわさび抜きです」
あ、美紀はのんびり湯飲みで、セルフサービスのお茶を飲んでる。最初から勝ちを狙ってないな。志桜里に至っては、手を頭の後ろで組んで面倒そうな顔をしている。
杏奈だけは、本気モードでレーンを流れている、皿やメニューに交互に視線が動く。
私の左に座る志桜里が、どこか遠くを見つめている。
「私は良いけど、お店に迷惑じゃないかな?」
私は良いけどという、角が立たない風に、予防線を張ってる。つまり、闇回転寿司ゲームに反対なんだ。
「ふふ、志桜里。もうギブアップ?」
わたしの右から声がした。美紀が湯気の立つ湯のみから、唇を離しながら、横目で唇の端を上げていた。
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