第一章

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桜が指定の住所に車を横付けると、娘の美咲がアパートの玄関から現れた。 続いて、菜々と思われる女の子が姿を見せた。 でも、そんなにヤンチャじゃなさそうだ。 あれ? もう一人、男の子、誰? 菜々ちゃんのお兄さんか? 家族は二人だけじゃなかったの? 親類? 最後に猫おじさんが顔を出した。 桜は、認知症になるには、まだ早いんじゃないかと首を捻りたくなった。 桜と同じ世代だった。 路上で、美咲とぎこちなく交流した。 三人を紹介された。 男の子は菜々と美咲の中学の先輩で、今は高一の西見叡(にしみあきら)だった。 菜々と猫おじさんには他に家族がいないので、自ら付き添いを買って出た。 高校は休んだと言う。 桜は違和感を禁じ得なかった。 あれ? 俺っちの高校の後輩だよ。 「お忘れ物はございませんか?」 「保険証とお財布は大丈夫でしょうか?」 病院への送迎は、そこの確認が肝なのだ。 「はい、大丈夫です」 菜々がバッグを覗いた。 桜の車は、美咲をその場に残して、三人を乗せて発車した。
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