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「こりゃ驚いた。中から人が出てきたぞ」
モグラのように穴から顔を覗かせた俺の周りを取り囲んでいたいのは、数人の水夫。
その向こうに浮かんでいたのは、きらびやかな光を放つ、巨大な豪華客船だった。
俺はすぐに水夫に問いただした。ここはどこの海なのかと。
すると返ってきた答えは、想像を絶するものだった。
「世界最大の生物、“テラントホエイル”。ここはそいつの胃袋の中さ」
「航海の途中、我々はそいつにあの船ごと飲み込まれたのだよ」
水夫の話に俺は絶句した。
ようやく脱出できたと思ったら、また胃袋の中に逆戻り……。まさかギガントホエイルもまた、捕食される側の生物だったなんて……。漁師の癖に何も知らなかった。まさに胃の中のカワズと言ったところか。
これからも胃の中での生活が続くと分かりガックリと肩を落とす俺だったが、あの時よりは絶望していなかった。
今回は一人じゃない。同じ状況下に置かれた仲間が大勢いる。今度こそ、外の世界に脱出してやる。
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