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死までまだ猶予があると分かった俺は、何とかしてここから出るべく考えた。
まず初めに思いついたのが、奴が食事をする瞬間を見計らい、口から脱出する方法。
しかしそう上手くいくとは思えない。俺が飲み込まれた時みたいに、いつも海面に出て食事をするとも限らないし、口へ行こうとしても流れてくる海水で押し戻されてしまうだろう。
次に口がダメなら鼻から脱出する方法。ギガントホエイルもクジラ同様、潮を吹く。その際、必ず海面に頭を出す。それに合わせ鼻から出れば確実に外へ脱出することができる。
ただし脱出したところでそこは海の上。さすがに漁船ごと鼻の穴から出るのは不可能なので、体ひとつで海に投げ出され、結局広大な海原を漂流するはめとなる。それにまた奴に飲み込まれ胃袋へ逆戻りすることだってあり得る。ハッキリ言って、無謀だ。
だとするともはや八方塞がり。どうすることもできない。
が、まだ希望はある。
俺の漁船には海での遭難を想定して発信器が備わっている。恐らく今ごろ俺がいなくなったと妻が騒ぎ、漁師仲間総出で海を捜索しているはず。上手くいけば発信器からの電波を受信してくれるだろう。
軍の力を借りればきっとギガントホエイルも仕留められる。僅かでも希望があるのならそれに賭け、一日でも長く生き延びてやるんだ。
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