「お前は二人分食べないと。」って、夫が私に言うんです。

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「これ、食ってみろ」  少ししてから、夫はそう言って別の胡麻豆腐の乗ったお皿を差し出した。 「……これ?」  見た目は、さっきのと変わらない。  同じ胡麻豆腐に見えるそれを、私はスプーンですくおうとした。 「あ」 「『あ』?」  またオウム返しする夫に、逆に尋ねる。 「ぷるぷるん、ってする……?」 「してるか?」 「うん、なんとなく……?!」  夫の期待に満ちた目で見守られながら、胡麻豆腐をすくったスプーンを、口に…… 「……美味しいっ!!」 「『美味しい』?!」 「うん、美味しい!ぷるぷるする!それから、ちょっとねっとりって言うか……美味しい、これ!すごく美味しい!」 「そうか!」  夫は私の頭を、よしよしって撫でてくれた。すごく、嬉しそう……。  私も嬉しい。それに、すっごく、美味しいし。 「これ、同じ胡麻豆腐だよね?どうしてこんなにぷるぷるなの?」  そう聞くと、夫は少し得意げになった。 「ああ。湯煎(ゆせん)にかけた。」 「湯煎?!」  ……この人の口から、「湯煎」って言葉が出るなんて。  驚きすぎて、私は食べてた手が止まった。
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