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「……あ。」
「『あ』!?」
こわごわ口に入れてみて、びっくりした。
生臭くない。胡麻の香りがするけど、嫌じゃない。つるっとして、ぷるんとしてて、ちょっとやわらかくて、溶ける。
「これ、食べれるみたい……」
「そうか!」
ずーっと私の事を見ながら、いちいちおんなじ顔になってた夫が、ぱぁっと嬉しそうになる。そんなに喜んでくれるなんて、私も嬉しい。
「でも……」
「『でも』?!」
夫の眉間に皺が寄る。
「……ちょっと、固い?」
「『固い』?」
真面目に聞いてくれてるのに、笑っちゃいそう。さっきからオウムかインコみたいになってるよ?
「固い、って言うか……もっとぷるぷるしてたら、もっと美味しいかなー……なんて」
贅沢すぎる私の意見を聞いた夫は、眉間に皺を寄せたまま、うーん、と考えた。
「…………そう言えば……」
「『そう言えば』?」
今度は私がオウムになった。なんだかんだ言いながら美味しく食べれるのが嬉しくって食べてたから、胡麻豆腐は、半分以上減っている。
「……ちょっと、待ってろ。」
夫は私の頭を撫でてから、いそいそと台所の方に行ってしまった。
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