67人が本棚に入れています
本棚に追加
「これ、食ってみろ」
少ししてから、夫はそう言って別の胡麻豆腐の乗ったお皿を差し出した。
「……これ?」
見た目は、さっきのと変わらない。
同じ胡麻豆腐に見えるそれを、私はスプーンですくおうとした。
「あ」
「『あ』?」
またオウム返しする夫に、逆に尋ねる。
「ぷるぷるん、ってする……?」
「してるか?」
「うん、なんとなく……?!」
夫の期待に満ちた目で見守られながら、胡麻豆腐をすくったスプーンを、口に……
「……美味しいっ!!」
「『美味しい』?!」
「うん、美味しい!ぷるぷるする!それから、ちょっとねっとりって言うか……美味しい、これ!すごく美味しい!」
「そうか!」
夫は私の頭を、よしよしって撫でてくれた。すごく、嬉しそう……。
私も嬉しい。それに、すっごく、美味しいし。
「これ、同じ胡麻豆腐だよね?どうしてこんなにぷるぷるなの?」
そう聞くと、夫は少し得意げになった。
「ああ。湯煎にかけた。」
「湯煎?!」
……この人の口から、「湯煎」って言葉が出るなんて。
驚きすぎて、私は食べてた手が止まった。
最初のコメントを投稿しよう!