67人が本棚に入れています
本棚に追加
「容器に入ったまま湯煎で温めると良いって、昔聞いた事が有ったから。思い出して、やってみた」
「へえ……」
昔聞いたって、誰に?
……って聞きたいけど、聞かない。
夫はもともと、料理なんかしない人だった。それどころか仕事が忙しかったりすると、何も食べない人だった。
なのに、「湯煎」とかそんな事を知っているのは、誰かに──綺麗で華やかで頭の回転が速そうな、奥さんだったあの人に教えられたのかもしれない。
今ご飯を作ってくれたり、こうやって私の食べれる物を探し回ってくれたりするのは、結婚前の事を考えると奇跡みたいだ。
……それは多分、この子と私の為にしてくれてることで……なのに。
心が狭くて焼き餅焼きの私は、時々夫の昔の事が気になってしまう。
でも、今と未来はこうやって私たちと一緒に過ごすって、決めてくれたんだから。
自信持たなきゃ、いけないよね……。
「……赤ちゃんって、すごいね」
「ん?」
「ご飯作ってくれる様になるなんて、思ってもみなかった」
からかい半分で、言ってみる。
「……凄いのは、ちぃだろ」
「へっ?」
「男には腹ん中で育てるのも、産むのも無理だからな。それに、ちぃがこんなにすぐに母親になったのは、俺のせいだし……出来る事は、何でもする」
「……『俺のせい』なんかじゃ、ないですよ?」
ソファの隣に座った夫の手を握る。
最初のコメントを投稿しよう!