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「ラストだね。」 「あ、白木さん。そうですね。」 「なんかさー、SFだとラストだってのに限って事故起きたりしない?」 「なんですか、不吉なこと言わないでください。」 「冗談だよ‼︎怖い顔すんなって!」 管理側はお気楽かもだけど出る側の気持ちになってくれ。 「おー、雪花早いねー。そろそろ行こっか。」 「あはい。」 行きますか。ブルン、とエンジンをかける。この風景ともしばらくおさらばかあ。前には山形さん、後ろには賢ちゃん。頼りないけど…頼り甲斐はある。 ピー。 〈よし、始めよう。〉 もうこれも慣れたもん。一回につき7個くらいは処理できる。そろそろ終わりかな。あと1個くらいならいけるかも。衛星にアームを近づけると ピガッ アームが光った。危な。これまだ使ってる衛星なんだ。こんなんうっかり処理しようとしたら爆発だよねー。爆発で済むのかな。こっちはいいのか。衛星をアームが掴んだとき。 ビッガアァッ 「え⁉︎」 何今の。明らかにアームの光じゃないよね。光の方には…煙? ピー。 〈雪花やばい。賢吾が。本部にはもう連絡した。使い終わった直後の衛星が爆発したらしい。〉 え。そんなん、一回もなかったのに。なんで最後に限ってこんなんなるわけ? ピー。 〈今は炎上してる。近づかないほうがいい。〉 〈何言ってるんですか。賢ちゃんはどうなるっていうんですか。テキオー薬ぐらい私は飲んでます。炎上してる中に賢ちゃんほっとくとでも?〉 山形さんの声が珍しく強張ってる。 〈私は行きます。〉 ピー。 〈止めろ!〉 は? 〈止めて。だって、もう…これ以上いなくなって欲しくない。〉 〈ふざけないでください!賢ちゃんは死んだりしない。勝手に殺すとか、許しませんから。〉 もう行こう。こんなところでゴタゴタしてらんない。うげ…あっつ。賢ちゃん…繋がんないだろうけど繋いでみよう。 〈賢ちゃん生きてる⁉︎〉 返事がない。当たり前か。急ごう。 ピー。 〈ガ…ガサ…ん…ガガガ…きちゃ…ガサササ…雪ちゃ…ガー…うぶ…ガサ…〉 ‼︎ 〈賢ちゃん⁉︎今行くから。〉 この火の中に飛び込むのか…。躊躇ってらんないよね。行きましょ。 「熱っ」 テキオー薬飲んでなきゃ死んでるよ。飲んでてもこれはまずいな。早く見つけて早くしないと。アーム出そう。あ…あれかな。アームを伸ばして掴む。早く出よ。こんなとこいられない。空気がないから火が広がるわけじゃないけど、熱いのに変わりはない。 ピー。 〈ガサガサガササ…ちゃん…ガー…とう…〉 〈当たり前のことしただけでしょ。守られっぱなしじゃやってけないよ。〉 よかった。2人とも生きてる。ほら見ろ山形信治よ。私が帰るところは山形さん1人のところじゃない。山形さんと賢ちゃんのところ。2人のところで私は生きる。 〈山形さん聞こえます?2人とも生きてるんで。危ないことはした、でも私たちは生きてる。私たち2人が安全な方をとって賢ちゃんが死ぬのと、どっちがよかったんでしょうかね。考えなくてもわかると思いますけど。これは事故でしょ?山形さんのせいじゃない。もう昨日は終了したって言ってるのに動いてるほうが悪いんですよ。でもまあ、みんな生きてるんだからいいんじゃないですか。〉 ピー。 〈そう、だね。かなりドキドキしたけど。俺は怖くて何にもできなかった。でも雪花は行った。雪花は強い。弱いけど、強い。〉 3人で宇宙ステーションに戻る。あの環のところにまた行くのはいつだろう。…どうせまた来るんだ、その時でいい。宇宙ステーションが近づく。
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