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第1章
飽和した全てに辟易した俺は、あてもなく散歩に出かけた。
蝉の声が耳を焼く。日は傾けどその放射光達はむしろ鋭さを増し、俺は、心まで風穴だらけにされるのはゴメンだ、と伸びた日陰を渡り歩いた。
夏休みの宿題、スマホゲーム、友人達の中の自分、親からのプレッシャー。
俺はそのうちに、自分が何をしたいのか、どんなことで心から笑っていたのか、分からなくなっていた。
生きている気がしない。ただ、死んでいないことは確からしい。
だから、訳もなく散歩するなどという不条理なマネをしているのだ。その不条理さが自分らしさを形作ると、縋るように信じて。
だが、それは実に弱々しい大義名分で、今自分がしていることは結局ただの逃避に過ぎないことも、どこかで気づいていた。
それでも、ただ流れに身を任せて考えず生きているよりも、自らの意志でアスファルトに灼かれている方が、いくぶん生きている気がしたのだ。
だって、常に何者かの言いつけを守って生活しているなんて、それじゃまるで子供じゃないか。子供のままでいるのは耐えられない。もう俺は高校生だ。子供じゃない。
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