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その時、何かが弾けてしまったのだ。
「待って。」
その声はあまりにか弱かった。
「もう少し、ここにいて。」
そう言って、奈未さんは俺の肩に顔を埋めた。
高まる鼓動。奈未さんの腕が、俺の腰へ縋るように絡みつく。
彼女が何に悩んでいるのか、俺は知らない。
ただ確かなのは、高校生の自分を相手にこんな事をしたらどうなるかということの想像もできないほど、彼女は愚かなひとではないことだ。だから押し殺していたのだ。
それでも、きっと彼女は、もはや誰かにもたれかからないでは、いられなかったのだ。
俺は奈未さんの肩に手を回した。
その思ったよりずっと華奢な肩は、微かに震えていた。
俺が、彼女を守らなければ。
「ダメだって分かってるんだ。ゴメン、でも、今夜だけは。」
「大丈夫です。俺も、今夜のことは、夢か幻か何かだと思うことにします。」
俺と奈未さんは、二人で夜を越えた。
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