壮介と見つかりたくなかったパンダ

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「お疲れ様ー!!」  疲れた。  本当に、疲れた。  理由は、分かっている。  二日間も、華也子のお守りをさせられた。そのせいだ。  押しが強い華也子は、些細な事でも意識的にも無意識ででも、人をからかって遊び倒す悪癖が有る。標的になると、非常に面倒臭いのだ。  それを知っている和史は、事前相談での接触係を毅と共に担当し、当日の相手は壮介に押し付けた。もっとも、「顔を合わせる数は少ないけどずーっと関わるのと、会うけど短いのとどっちが良い?」と聞かれて後者を選んだのは、壮介だ。祝いの会には来るのだから、顔は絶対に合わせる事になる。それならば会っている間にやり取りが増える方がまだマシだ。  結果的にはなんとか我慢出来たが、ぎりぎりだった。役割は果たした。限界に達したので、飲み会で絡むつもりは無い。 (……帰りてぇな……)  気を抜くと、ふと思ってしまう。  この店は、ビールも不味い。自分は基本ビールなら何でも良いのだと思っていたが、ビヤホールのビールは美味いのだという事を、よそで飲むと再認識する。  振り回されまくる二日間を過ごしたせいか、家の静けさが懐かしい。静かに仕事だけしていたい。 (……うるせぇ時はうるせぇんだけどな、あいつも)  千都香の事を、ぼんやりと思い出す──別に、華也子と比べた訳でも無いのだが。  ちゃんと食べろだの床で寝るなだのと日頃は口やかましい千都香は、仕事中は、驚くほど静かだ。  時々、居るのか居ないのか、分からなくなる時すら有る。それなのに、奇妙な事に我に返って居るのに気付いても、邪魔だとも迷惑だとも、感じないのだ。  そう言えば、千都香は最初から変な女だった……などと思っていたら。 「壮介?ちゃんと飲んでる?」  傍若無人で、常にうるさい奴が来た。
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