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「飲んでる。十分飲んでる。飲んでるから、俺に構うな」
「まあ!飲みが足りないんじゃないの?」
追い払おうとしたが、上手くいかなかった。手近にあるビールを手にして、迫って来る。
「お前は、学生か……」
「やだ、そんなに若く見える?…………あら?」
違う。精神的にガキ臭ぇという意味だ……と言うのも面倒なので放っておいたら、目敏く荷物の方を見て、きらりと目を光らせた。
「パンダ焼き!?いつ買ったの?」
見つかりたく無い物を、見つかってしまった。
「返せ、華也子」
「どうして壮介が、パンダ焼き!?」
答えないと返さない!と叫ばれる。
うるさい上に暴君だ。この状態でこの年まで居るというのは、周りが甘やかしているせいだ。誰か、ガツンと言える奴は居ないのか──壮介には無理だ。無理だったから別れたのだ。とっくに匙を放り投げている。
「……留守で迷惑掛けてる奴への土産だ」
「お土産……昨日、買ってなかったわよね?今日買いに行ったの?!」
「固くなるだろ」
明日渡すのに、何故昨日買わねばならないのか。こういう物は出来てから時間が経てば経つほど不味くなる物だろう。今日ここに移動する前に、買いに寄ったのだ。
「……わざわざ?かなりの回り道よね?」
「もう良いだろ。返せ、潰れる」
潰さない為に預けず手元に置いているのに、華也子に手荒に扱われては困る。
「……飲んで。」
「あ?」
「返すから、これ飲んで」
睨みながら飲んだ。返さなかったらただでは置かない。力ずく──とは、言わないが。華也子の為ではない。せっかくのパンダが潰れてしまう。
「壮介」
一頻り飲まされた頃、グラスを片手に毅がやって来た。
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