桜森さんがチキン南蛮を食べる理由を俺は知らない

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翌日、想定外の事態が起きた。なんと、桜森さんは再びチキン南蛮を注文したのだ。二日連続同じメニューと言うのは今までのルーティンでも前例がない。 さらに翌日桜森さんが注文したのは、またもやチキン南蛮だった。金曜日はカレーの日のはずだった。そのルーティンを崩してまでもチキン南蛮が出てくるというのはどういうことだろうか? 「桜森さん、相当気に入ってるんだろうなぁ。チキン南蛮。三日連続なんて相当ないぞ。俺も金がない時だってそば・カレー・うどんと飽きないように回していくのに」 梅野の昼飯のルーティンには全く興味はない。むしろ思考の邪魔だから黙っていてほしい。今振り返ってみると桜森さんのルーティンが崩れることは一度もなかった。金曜日に体調が優れない日もあったが、その時もカレーを食べていた。無理しないでうどんとか食べた方がよいのではないかと言ったが桜森さんはその時、「いつも通りをいつも通りやらないと逆に調子が上がらない」と言っていたほどだ。 それほどまでにルーティンにこだわりを持つ桜森さんがそのルーティンを崩してまで食べる程の意味がチキン南蛮には込められている。知りたい。一体、桜森さんは何故チキン南蛮を食べるのか。 「彼氏が出来て、デートの日だとか。今まで、そういうルーティンはなかったのかよ?」 「前にたぬきうどんを食べる理由が読めなくて、デートの日なのか聞いたことあったけど、その時に今はそういう相手はいないって言っていたけど」 「良く聞けたな。下手したらセクハラと訴えられてもおかしくないぞ、それ」 「あれは俺も不用意だった。口走ってから気付いて、内心冷や冷やしたけど『する相手がいません』って言ってたけどな」 結局、たぬきうどんを食べる日は音楽を購入した日に食べる、ということを教えてくれた。それからしばらくは1日おきにたぬきうどんをすすっていた。「菊池さんが教えてくれたアーティスト、すっかり私もはまってしまいました。ただ毎日買うと、たぬきうどんを毎日食べなくてはいけないので、1日空けることにしています」 「一気に買えばいいのに」 「……それもそうですね。いや、あのですね。どこかの優しーい先輩が見かねて貸してくれたりしないかなぁと思ったりしてたんですけどねぇ」 わざとらしく言う桜森さんに俺は苦笑した。そんな回りくどく伝えなくても言えば貸したのに。翌日、厳選しようと思ったが結局紙袋いっぱいになったCDを桜森さんは喜んで受け取ってくれた。そんなたぬきうどんの日でさえ一日空けていたのだ。 ということは、チキン南蛮を毎日食べ続けているのは何か理由があるのだろうか? なにかを待っている? なにを? いくら考えても答えは出なかったので、俺は桜森さんがいつまでチキン南蛮を食べるのか追ってみることにした。
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