ありがとう

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ありがとう

 今この瞬間は、幸せな時間のはずだった。  君を抱きしめて、体温を感じて、唇を重ねている。  自分の心臓は煩く鳴っているし、彼女の鼓動もこちらへ伝わってくる。  それなのに酷く悲しい気持ちになるのは、多分彼女が泣いているから。  目をつぶっていてもわかる。時折彼女が嗚咽を漏らしていること。  でも、僕は何故彼女が泣いているのかわからない。  なぁ、教えてくれよ。君を苦しめるのは何だ?君を悲しませることは何だ?  教えてほしい。僕がそれを、涙と一緒に拭いたいから。  教えてほしい、教えてほしかった。  あぁ、僕の頭の中から  君の笑顔が食べられていく──
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