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はじめまして
目が覚めると、そこは保健室のベッドの上だった。
ゆっくりと起き上がり、顔を上げた先の窓の外には茜色の空が広がっていた。壁に掛かっている時計は五時半を指していた。
「体調はどう?」
机に向かっていた保健室の先生が振り返り、優しく問いかけた。
お礼と大丈夫だということを伝えたあと、自分がどうして保健室にいるのかを聞いた。
「女の子の生徒がね、連絡をくれたのよ。あなたが急に倒れたって。しかも旧図書室っていうもんだから、余計びっくりしたわ。特に熱とかもなさそうだし、疲れが出たのかもね」
旧図書室というのは、その名の通り今は使われていない図書室だ。この学校に存在こそしているものの、生徒にも教員にも話題にされることはない。僕だって今の今まで忘れていた。
そんなところで急に倒れた、か。その女子生徒が何故その場にいたのかは謎だが、助けてくれたという事実は変わらない。お礼が言いたかったので、その女子生徒の名前を教えてくれないか尋ねると、先生は顔を伏せながら言った。
「ごめんね、私も全校生徒の名前は把握していないの。だから名前を聞こうと思ったんだけど、その子足早に帰っちゃって…」
なら、何か特徴はありませんかと尋ねた。すると先生は手を顎に当てながら答えた。
「特徴なら…えーっと、肩より短いボブで、色白で、細身の女の子だったわ。」
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