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番外編、少年II
その心配事というのは、事故にあった当時の僕の友達のことだった。
彼はかっちゃんといって、あの頃一番中の良かった友達だった。いつも爺ちゃんと過ごしていた僕を、なにかと遊びに誘ってくれた、優しいやつ。
僕が事故にあって死んだことで、かっちゃんは酷くショックを受けてしまったようで、両親は仏壇の僕に祈ってくれてたけど、かっちゃんは僕のいる交差点の歩道で手を合わせてくれた。
かっちゃんは中学に上がっても高校生になっても来てくれた。けれど、両親とは違い、彼の中の罪悪感は薄れることはなかった。彼は、僕の話を信じなかったことと、道路を飛び出した僕を止めようとして出来なかったことで自分を責めていた。
彼は爺ちゃんが死んで悲しみにくれていた僕を一番そばで慰めてくれた。僕はそれだけで十分優しくしてもらったと想っているし、感謝もしているのに。生きているうちにちゃんと伝えられたら良かったんだけど、逆にトラウマになってしまうような事故になっちゃって、それだけは後悔している。
かっちゃんは僕に謝りたいと思っているようだった。だからか、いつしか僕があの日教えた光柱を探すようになった。けれど、光柱はなかなか現れてくれない。空を見てはため息を吐く毎日だったけれど、かっちゃんは、最後の最後まで僕の元に通ってくれた。
十数年経って、やっと光柱が現れてくれた。僕は長年の願いが叶って嬉しくて、すぐに空を飛びたかったけど。
その瞬間を共有してくれた友達に、謝り続けてくれたかっちゃんに、僕は責めたりなんかしないと、なんにも心配することはないと、伝えないといけないと思った。でないと、この先もずっと彼を僕に縛り続けることになってしまうから。
光柱を登って行く間、不思議な感じだった。あんなに待ってた光景も、あっという間に終わってしまう。
最後にかっちゃんの方を見れば、彼は悲しそうな顔をしていた。せっかく会えたのにって、言ってたもんね。
でも、僕から話すことはない。かっちゃんは、解放されるべきなんだ。幸せになってほしい。かっちゃんがいてくれたから、僕は寂しくなかったんだから。
「ありがとう、かっちゃん。」
光柱を探しているときは、ため息ばかり吐いて暗い顔をしていたかもしれないけれど、心配をかけないためにも、最期は笑って行かなくちゃ。
そして、僕はもう振り返らなかった。
白い鷹は力強く羽ばたき、美しい羽を雫と光に煌めかせて飛んだ。
虹をくぐると、目の前いっぱいに、眩しい光が溢れた。
やっと、会えるんだ。
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