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「ところで」
「何だ?」
この箱の事なんだが、とヴァフィラがテーブルの上へ置いたのは、くだんの煙草の入った木箱だ。
「この箱を見ると、なんだか胸がざわめくんだ。見ると煙草入れのようだが、記憶を失っている間に何かあったのだろうか?」
「え? あ、その」
「目覚めた時、妙に喉がいがらっぽくて頭痛がしたのは、もしかしてこの煙草を吸ったせいかな?」
「いや~、ヴァフィラは煙草は吸わないだろ」
でも、と妙に食い下がるヴァフィラのまなざしは真剣そのものだ。
「もう一度、この煙草を吸えば、記憶を失った時のことを思い出すかもしれない」
「や、それはダメ。やめとこう、な!?」
もう一度吸わせたいのは山々だ。なにせあの時のヴァフィラと来たら……。
(激エロだったもんな、ムフフ♡)
我を忘れて乱れたヴァフィラの姿が眼に浮かぶ。
「何を思い出し笑いなんかしているんだ。やはり、何かあったのだな!」
「な、何もないって!」
不毛な言い合いが続く二人の仲に、ようやく日常が帰って来た。
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