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八・見えてくること
夜の大学と言っても、夜十時までは使用できる場所もあって、まだまだ人がいる時間でウロウロしていても何の問題も無かった。
ただ、劇団クレッシェンドの部室という名のプレハブは学内でも寂れた場所にあり、その中に入るには肝試し並みの暗さと恐怖が伴った。
「ちょっと僚汰、電気点けてきてよ」
「なんで俺なんだよ? 部室に行くって言ったのは愛ちゃんだろ?」
「うるさい! 男でしょ⁉ 莉帆は男らしい人が好きだって!」
「ったく‼」
そんなやり取りをして、僚汰君が渋々と中へ入って電気のスイッチを押した。すると、いつも通りの部室が現れたから、ようやく愛と私は安心して中へ入れたのだ。
すぐにみんなでアンケートの入ったファイルの棚へ向かって、愛が最近の公演のものを手に取ると、肩を寄せ合って中を覗いて〝笹森沙絵〟の名前を探した。
「あった! これだわ」
見覚えのある丸っこい可愛らしい文字が並んでいる。
そこには住所と携帯番号まで書いてあった。
「電話……してみる?」
「その方が手っ取り早いわよね」
誰が電話するか、なんて話し合う間もなく、すぐに愛がスマホを出して電話を掛けた。
しばらくの間、耳にスマホを押し当てていた愛だけど、「かからない」と言って小さくため息をついた。
「電源、入ってないの?」
「うん、アナウンスが流れるだけ。笹森さん家って住所どこだった?」
「俺んちの方だ。こっからだと二駅先だな」
私たちは一瞬だけ三人で顔を見合わせたけど、心は当然のように行くことに決まっていたから、みんな一斉に頷いた。
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