一・驚愕の変事

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一・驚愕の変事

 そして日曜日、私は滉也からプレゼントされた浴衣を着てマンションの部屋で待っていた。    エレベーターのない三階に住んでいるから連絡をくれたら下まで行くのに、滉也はいつも部屋まで迎えに来てくれる。そういうところが、優しくて好きなところではあるのだけど。  約束の三時よりも少し過ぎて、チャイムが鳴った。  と同時に私の胸も高鳴った。  そして、まるで付き合い始めの時みたいだと、心の中で苦笑いしてしまった。だって、デートどころか、昨日の夜に会ったのだって一週間ぶりくらいだった。  毎日メッセージはやり取りしているけど、夏休みに入って大学に行かなくなると、強豪のバレー部に所属している滉也は急に忙しくなった。二年生にしてレギュラーになっているのは滉也だけで、大会では順調に勝ち進んでいるからこれからもどんどん忙しくなる。  なのに、バイトも日数を減らしながら入れているから、なかなか会うことが出来ない。近場の試合を見に行っても、結局は遠くから応援することしかできないから……。  そんな不満を紛らわすためにも、私もバイトをしたり演劇サークルに励んだりとしてしまうから、余計に時間が合わなくなっていた。  だから、今日は本当に久しぶりで、本当はバイトのシフトに入っていたけれど、無理やり他の子と代わってもらっていた。    玄関にある姿見鏡をチラリと見て滉也にもらった可愛い浴衣を確認した。  あっ、髪飾りがズレていた。鏡を見てよかった。  そして、私は玄関のドアを開けた。眩しい光が差し込んできて、背の高い滉也が立っているであろう人影が見えた。
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