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それから、順を追って話を進める。王都で追われたこと、孤児院でのこと、キンタたちのこと、うららさんのこと、トメさんから聞いたこと、……時間がないこと。
奏多が報告をしていたから、ざっくりの内容は知っていると思うけど、時折頷きながら黙って聞いてくれた。ひとしきり話し終わった後で、遥は深く息を吐く。
「……あと四日」
どういう意味合いでそう呟いたかは、簡単に想像ができた。あとたったの四日で世界の在り方が変わるかもしれない、その数字の重さを再確認させられる。
「あたしが知らないだけで、世の中そんなことになってるだなんてね」
そう言って、呆れるように笑った。
「どこもそんなもんだろ。中心にいるのは一握りの人間、それ以外は決められたこと後になって知って、従うしかできなんだから」
「その中心に、光はいるんでしょ?」
「中心というか、首根っこ掴まれて逃げられないだけだけどな」
「それでもその中にいるのなら、何かはできるってことよ」
分かってる、そんなこと分かってる。だけど、あとオレは何をどうすればいい。どうしたら六連星に勝てるんだ。
思わず吐き出しそうになった弱音を呑み込む。言葉にしてしまったら、本当にもうどうしようもなくなってしまうような気がする。遥の言う通り、何かはできるはずなんだ。その何かさえ分かれば……。
「光」
その声は、いつものトゲのあるような声でなく、両手で包み込むような優しい声で。
「あんたがその中にいるのなら、あたしたちだってその中にいるってことよ。一人で抱え込むのはやめなさい」
「そうですよ!一人じゃ何もできないことも、みんなでやれば何でもできます!」
「あたしたちが揃えば最強なんだから。あんたは後ろでふんぞり返って座ってればいいの」
オレが口を挟む間もないくらい勢いよく言われた。おかしいな、てっきり遥を元気づけようとしていたのに立場が逆転してる。ここまで言われると、流石に悩んでる方が馬鹿らしい。
「……お前らが大人しく座らせてくれるとは思えないけどな」
「あら、よく分かってるじゃない」
こんな下らないやりとりで笑い合える時間が、本当にいつまでも続いてほしいと願わずにはいられない。みんなといられる時間があと四日しかないなんて、オレはそのことの方が苦しく感じた。
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