しかしさよならが足りない!

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望んではいけない。それはオレはどちらかを捨てる勇気がないからだ。選択肢がない振りをして、選ぶことを望まなかった。それでも、選べるのなら……オレは……。 開きかけた口を、ゼロの満面の笑みに遮られた。 『そんな生ぬるいこと、本当に僕がしてあげると思った?残念、君は役目を終えたら帰ってもらうよ。この世界に残ろうなんて甘いこと……考えるのはやめなよ』 声のトーンはどんどん落ちていき、最後は顔を伏せた。ここまではっきりと言われると苛立ちを覚えるが、それでも、何も考えなしにこんなことを言うはずがないことが分かっている。オレの考えが筒抜けなら、尚更。 『……こう言った方が君のためなんでしょ?』 『……嫌な役目、押し付けちゃったな』 『僕は別にいいのさ。ただ、君が残れないのは事実。君がこの世界に存在していられるのは使命があるから。それが終われば、君はこの世界にとって異分子でしかない。そうなると……また別の理由で君に会いに行かなくちゃいけない』 『それは遠慮願いたいな』 秩序が乱れれば、ゼロたちが動く。流石にこいつに勝てる気はしないしな。 『だから悪いけど、君が望んだところで叶えられない』 随分と落ち込んだように言う。できないものはできない、言うのは簡単だ。だけどできないことを納得させるのは難しい。オレがここでごねたところで、何も変わらない。ただ事実を受け入れること以外、できることがない。抵抗するだけ、互いに損しか与えない。 オレとしては、別にいい。ごちゃごちゃ考える必要がなくなったんだから……それでいい。 『大丈夫、分かってる』 自分に言い聞かせる。 『何もかも、元通りになる。そうなれば……それが一番だ』 元の鞘に収まる、一番いいじゃないか。この世界オレはいない、それが当たり前だった。それがたまたま使命やらなんやらで連れて来られてたまたまあいつらと出会って名残惜しんでいるだけだ。 言い換えれば、まさに夢のような時間だった。 これ以上ない幸せを、望んじゃいけない。 望んではいけない……だけど。 『……ゼロ、一つだけ、頼みたいことがある』
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