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こんな下らないやりとりをして、遥も少しは回復しているみたいだ。顔色も今朝と比べたら随分と良くなっている、分からんけど。
「奏多は?」
「部屋にいる。何度か抜け出そうとしたんだけどね、ずっとくっつかれてたから流石に諦めて寝たわ。ご飯も食べて、顔色も良くなったからようやく許可が下りたと思ったらこの時間よ」
流石奏多。こういうことに関しては一切妥協しないし、遥も奏多には弱いからな。オレだったら秒ではっ倒される自信がある。
しかしこうなると、オレはお役御免ということだろうか。隼人の寝顔も随分前に見飽きてたし、寝ていたとはいえ、そろそろ横になりたい。体バキバキだし。
「じゃあオレはそろそろ……」
「ねぇ」
帰ろうと、腰を上げようとしたところで呼び止められた。
「もうちょっと話さない?」
珍しいことを言うもんだから、まじまじと遥の顔を覗いてしまう。一刻も早く隼人と二人きりになりたいだろうに、ついに壊れたかと思えば、どうやらそうでもないらしい。青春ラブコメよろしくの台詞の割には、頬を赤く染めていたりもしていない。ただ、挑戦的に微笑を浮かべているだけで。
これは長くなりそうだと、上がりかかった腰を下ろして背もたれに体を預けた。
「いいよ。どうせやることないし」
「知ってるから誘ったの」
……帰ってもいいかしら。
「……でも珍しいな。部屋で奏多とのんびりお喋りの方が良かったんじゃないか?」
「もちろんそれはそれで楽しいけど、気軽には言えないことだってあるじゃない?」
まぁ……奏多だしな。あいつはあいつで頼りになるけど。
「で、奏多に言えないことって?」
遥の視線は、隼人に移った。
「独り言だと思って聞いて。……あたしはね、嬉しかったの」
……まぁそんないきなり喜ばれても困るのですが。
「光は別の世界から来たでしょ?隼人くんは昔から凄くて、カナちゃんは頭いいでしょ?みんな特別な何かで、あたしだけなんだか普通だなって、思ってたの」
「おいおいお前が普通だったら他の人たちどうなっちゃうんだよ。そもそも遥だって頭いいだろ?お前らまとめて三人学年一位だったし」
それでも、遥は首を横に振る。
「あたしは違う。隼人くんと並べるようにずっと努力してきた。隣に胸を張って並べるように必死に食らいついていた、それだけなの。勉強だって、誰よりも時間を費やしたから。別に要領がいいわけじゃないの」
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