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遥の言葉に反論しようと思えばいくらでもできた。普通の人はそこまで努力はできない。勉強をいくらしたって覚えきれないことはあるし、ケアレスミスだってする。でも遥はそんなことなかった。努力して、その努力が実っているのなら、それは特別と呼んでいいと思う。……そもそも原動力が隼人の時点で特別というか……特殊だな。
「ずっと言い聞かせてきた。自分は隼人くんの隣に立てる人間なんだって。そうやって誤魔化し続けて、夏休みの時、結局あたし一人じゃ何もできないって思い知らされた」
そう思ったのは遥だけじゃない。オレも、奏多も、きっと隼人も。みんな、自分の無力さを思い知った。
「名前には意味がある……。今朝話してくれた三島の予言には、隼人くんもカナちゃんも……光も関わっている。それを聞いて納得したわ、やっぱりあたしは特別じゃないんだって」
「……ろくでもないけどな」
「それでも、あたしも関わっていたかった。そうしたらあたしも、特別になれるような気がしていたから。一緒にいられることが許されているような気がしたから。……それが違うって分かって、嬉しかった。……なんだか、諦めがついた」
「諦め?」
「そうね、覚悟ができたっていうのかしら。みんなを守る覚悟。方法がないのなら、あたしが時間を稼ぐ。あたしには、それくらいしかできないから」
「……遥、お前それ本気で言ってるのか?」
「本気よ」
「……怒るぞ」
「じゃあ光はどうするの?このまま犬死にするつもり?」
「そんなつもりは!……ないけど」
反論の余地なんてない。何の方法もないことは、オレが一番よく分かっている。このままいけば簡単にやられてしまうことくらい、分かっている。それでもどうにかできると信じて、みんながオレに時間を与えてくれて、これでもかというくらい戦ってくれている。
「だったらそれしか方法はないんじゃないの?」
遥のいう通りだ。時間はあればあるだけ嬉しい。
だけど……これ以上誰かを犠牲になんてさせたくない。これは本音だけど、言ったところで遥は引き下がってはくれない。オレが素直に頷かなくても、遥は戦いに行ってしまう。遥が稼いだ時間の中で例え方法が見つかったとしても、喜ぶことなんてできない。これからの世界に……遥は必要だ。
「……一つ勘違いをしてるよ」
「勘違い?」
これは言いたくなかった。それでも……オレより先に、死なせてたまるか。
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