しかしさよならが足りない!

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「特別だよ、遥は」 「そんな安い言葉には……」 「オレたちにとって、とかそういう意味じゃない。本当に特別なんだ……六連星にとって」 一時の沈黙。静寂がうるさい。 「……どういうこと?」 「不安にさせるからって、奏多と黙っていようと約束した。六連星は遥を必要としている」 「意味が分からないんだけど」 怪訝そうな顔をする。心なしか早口になっている気がする。 「例えば六連星が生き残ったとして、あいつだって相当な歳だ。先もそんなに長くない。それなのにあいつがこんなにこだわっているのは、この先も生きられる方法を見出しているからだ。夏休み、遥が政略結婚させれそうになったのはだだの気まぐれだと思うか?あいつは遥を手元に置いておきたかったんだよ。名前に意味があるってのはオレたちのことだけじゃない。……神代遥、お前もだ。神の依り代に、選ばれてるんだよ」 一気にしゃべったせいで、息が少し乱れる。鼓動が速くなっているのが分かる。隼人の寝顔に視線を落とした。そうしたら、少しは落ち着くかと思ったから。 でも、そんなことはなかった。むしろ、罪悪感でいっぱいになった。オレは遥を止めたいと思って話したけど、どうしようもない苛立ちを、ただただぶつけてしまったんじゃないかと……。 「なんだ、結局そうなんじゃない」 「え?」 腑抜けた声が出た。深刻な話をしたつもりだったのに、返って来たリアクションがあっさりしすぎて。思わず顔を覗き込むと、今日一番の笑顔を浮かべてた。 「なんでお前、笑って……」 笑っていられるんだ、そう訊ねようとした。だけど、できなかった。本当にいい笑顔だったから。 「結局あたしたち、運命共同体ってことでしょ?」 「いやまぁそうだけど……」 「あたしが一人戦ったって、相手にされないんでしょ?」 「……捕まって終わりだろうな」 「逆に迷惑すら掛けそうね。だったら、一緒に戦うしかないじゃない。あたしの命も一緒にかけて……戦うしかないじゃない」 瞳には、強い意志。エメラルドグリーンに輝かく瞳は、オレを真っ直ぐ捉えて、揺れない。綺麗だと、場違いにも思った。 「あのオヤジにあたしの体乗っ取られるってことでしょ?考えただけでも鳥肌が立つ。そもそも女の子に乗り移ろうって発想が変態よね。あの王様実はただの変態なんじゃないの?あぁ、気持ち悪い」 わざとらしく震えて見せる遥に、思わず笑ってしまった。六連星だって真剣だろうけど、こんな気持ち悪がられてたら少しくらい傷つくんじゃないかと思う。いやでも、いい気味だ。 「そんなわけだから光……負けられないからね」 「……最初からそのつもりだ」 覚悟ばかり、決まっていく。背負うものばかり、増えていく。奇跡なんてない、偶然なんてない。それでも戦って……勝つんだ。
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