しかしさよならが足りない!

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「ところで光」 「ん?」 打って変わって、怪しげな笑みを浮かべている。聞き返す前に、帰ればよかったと真剣に思った。 「カナちゃんとなんかなかったの?二人で何日一緒にいたと思ってんの?」 ……まぁ聞かれるのはそんなところだろうとは思ったよ。 「生憎、期待しているようなことは何もない」 「は?」 え、なんで睨むの。怖い。 「あんた何のために学校休んでまで行ってたのよ……」 「いや、そのためではねーだろ」 「……本当に何もなかったの?」 さっきより凄みを増して睨まれる。圧が凄すぎて思わず視線を逸らし、その先では隼人が眠っている。おい、呑気に寝てんじゃねーよ。早く起きろバカ! 「何も、ないけど……」 「けど?」 「何もないけど……うららさんとは、ちょっと話した」 やべっ、圧に負けて口が滑った!遥は嬉しそうににやける。 「あら、何を話したのかしら?まさか好きな子のお姉さんに話せて、親友のあたしに話せないってことはないわよね?」 おいおいいつの間に親友になってたんだよ。川辺で殴り合った後に抱きしめ合うくらいしてからじゃないと親友になれないって知らないのかよ。仮にそんな展開になったら一方的に殴られるだけだから勘弁だけど。 「べ、別に大したことは……」 「優しく言っているうちに……ね?」 「……はい」 顔面凶器って、このことなのかなぁ。 「いやでも本当に大したこと話してないんだって。だだ、奏多のことが……す、好きって言っただけで……」 「あんた他人んちの姉に何言ってんのよ……」 全くその通りなんだけどお前がドン引くのは違うぞ。 「しょうがないだろ、なんかその場の雰囲気で答えちゃったんだよ……」 「まっ、でもようやく素直になったじゃない。で、告白はいつするの?」 「……何言ってんのお前」 「あんたこそ何すっとぼけたこと言ってんのよ。あと四日もあれば告白の一回や二回くらいできるでしょうが」 「いや二回目だと一回振られてんじゃん……」 「そんな細かいこと気にしてるからいつまでも進展しないのよ。ったく」 ……ふむ。一方的にやられるのは面白くない。ここは反撃をしなくては。 一度咳ばらいをした。 「それはこっちの台詞だ。遥こそ、時間があるからっていつまでも隼人と進展がなかったらぽっと出のどこの馬の骨とも知らない女にかっさらわれていくぞ」 遥は明らかに動揺を見せた。 「そ、そんなことないし!」 「おいおいそんな保証どこにあるっていうんだよ。隼人が他の誰かに一目ぼれする可能性だっていくらでも考えられるだろ?」 まぁ、ないだろうけど。 「そんなことない!だって隼人くん約束してくれたもん!」 必死になって語尾に、もん、とか可愛いな。……いや、そこじゃなくて。 「約束?」 「あっ」 失言に気が付いたらしく、遥は咄嗟に口元を覆うが、出た言葉までは戻らない。
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