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「……詳しく聞かせてもらおうじゃないか。まさか親友のオレに話せないことなんてあるわけないよな?」
「いや、親友じゃないし」
そのどストレートは胸に響く!
「お、お前から言ったんだろうが!ったく……で、約束ってなによ?オレも話したんだから遥も話せっての。あと四日しかいねーやつに言ったところで、大した影響ないだろ」
「それは、そうなんだけど……」
赤くなって、もじもじしている。普段からこれくらい乙女を前面に出していれば、隼人だってちょっとくらいはなびくかもしれないのに。
「……誰にも言わない?」
上目遣いでそう聞かれると、流石のオレもグッとくるものがある。落ち着け、これは遥だ。中身は終わってる、外見に騙されるな。深呼吸だ、深呼吸。
「言わねーよ」
まぁ、私の口は豆腐のように堅いことで有名ですが。
オレが答えると、遥は自分の足元に視線を落とし、そして隼人の方を何度かチラ見する。そうしてようやく意を決したのか、ぎゅっと握りこぶしを作った。
「……あのね、誕生日の時、約束してくれたの。……『全部終わったらゆっくり話そう』って。キャー!もうこれってプロポーズよね!?どうしようそれまでに何を用意したらいいの!?婚約指輪!?」
「……とりあえず落ち着こうか」
「バッカねあんた!これが落ち着いていられる場合じゃないでしょ!?ついに来たのよ!あたしの……いや、あたしの隼人くんの時代が!未来が!」
ダメだ。もう手の施しようがない。遥は明るい未来しか見えてない。眩し過ぎてオレには見えないよ……。
「隼人くんと出会ったあの日からどうやってプロポーズされようか、一日も妄想を欠かしたことはなかったわ!それでもこんなあたしにしか伝わらないくらい遠回しにするなんて、やっぱり流石隼人くんね!ロマンティック!」
流石遥さん、その妄想力には誰も勝てない。言った隼人でさえ、そこまでは想像していないだろうし。
「……うん、まぁなんというか……よかったな」
「ありがとう!」
心底幸せそうな、満面の笑みを浮かべた。まさか寝ている隣でこんな会話が繰り広げられているとは微塵も思わないだろう。ごめん隼人、オレには止められなかったよ。
しかしこいつらも先は長そうだと思いつつ、隼人がそんなこと本当に言い出したのなら、少しは進展したと考えてもいい……のかな?まぁ、間違いなくプロポーズの意は込められていなかっただろうけど。
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