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「みんなに生きていてほしい。オレがいなくなってもその先で、みんな幸せになってほしい。それでたまに集まってさ、少しでもオレの話が出たらなお幸せだ。……そういう未来を、オレは望んでる」
「……その中に、光さんがいちゃ駄目なんですか?」
奏多は視線をオレへと移し、真っ直ぐに目を見て話す。心なしか、その瞳は潤んでいるような気がした。とても納得しているようには見えなくて、だから優しく微笑み掛けた。
「駄目も何も、無理なんだよ。こればっかりは足掻いても変えられない。だからみんなの幸せを願うんだよ」
「光さんがいないのに幸せになんてなれません!」
奏多の声は響いた。何度も何度も、オレの心の中にまで。
驚いて言葉が出ない。勝手に開いてしまった口が閉じてくれなくて、乾燥していくのが分かる。
「幸せってなんですか!一人だけいなくなって、それで集まっても楽しくなんてなれません!光さんがいなくなってまで得られる幸せなんて……私はほしくありません」
一人俯く姿を目の前に、オレは何もできなかった。
きっと奏多も遥も、色々呑み込んでくれてオレのことを助けてくれている。余計なことは考えないようにして手を貸してくれる。
当たり前だ。考えてしまったら、動けなくなってしまう。色々誤魔化さなくちゃ、立ち止まってしまう。別れる準備を十分にしてからどうにかできるほど六連星は甘くないから、少しでも余計なことに気は配れない。
それでいて全部終わった後に、そういえばさよならだったねって話せれば、多分一番楽だったんだと思う。
でも奏多は違った。……いや、きっと奏多の中でもたくさん悩んだんだと思う。それでも、真正面からぶつかってくれて、思っていることをぶつけてくれることを選んだ。そうしてくれることは本当に……幸せなことだ。
「……奏多、ありがとう」
心から、感謝を告げる。奏多は顔を上げた。
「オレだってもっとみんなといたいよ。いろんなところを旅して、いろんなことを学んで、馬鹿やって、みんなで笑って……。そういう時間が一生続けばいいと思ってる、本当に」
オレのことをこんなに考えてくれている。本気で心配してくれている。こんな幸せなこと、あっていいのか疑いたくなるほど、幸せだ。
オレもみんなとこれからも一緒にいたい。奏多と一緒にいたい。二人で遊んで、笑って、甘い物に付き合わされて、振り回されて、そんななんでもない未来を……オレは欲しい。本心だ。
それでも、そうすることはできない。……だったら、これ以上奏多を不幸にする要素を一つでも取り除いてあげたい。オレのいないその先の世界で……ずっと笑っていてほしいから。ずっと幸せでいてほしいから。
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