しかし日常が足りない!

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強い風が吹いた。窓のわずかな隙間から入った風が滑稽な音を立てて、冷たい空気を運んでくる。きっと今日も冷え込むんだろうな、厚着していかないと後悔するだろうな、そろそろマフラーもほしい時期だな。 そんなことを考えながら目を覚ました。 カーテンの隙間から差し込む陽の光がまた今日が始まったことを教えてくれる。光を反射してキラキラ舞う埃をしばらく見つめながら、布団から抜け出すタイミングをうかがう。 こういう時は思い切って起きないと絶対に二度寝する。でも絶対寒いだろうしなぁ。そもそも冬眠する動物は一定数いるのに、人間が冬眠してはいけないなんて誰が決めたんだ。野生でたくましく生きる動物が冬に耐えられないのに、屋根の下でぬくぬくと育った人間が冬に耐えられるはずがない。だったら人間もきちんと冬は休みを取るべきだ。暖かい季節になるまで待って、それから活動を再開すればいい。そしたらまた暑くなって休んで……うん、ダメだな、起きよう。 呪いのようにまとわりつく布団を引っぺがして体を起こす。思ったよりも冷え込んでいる空気に、もう一度布団を頭から被りたくなる気持ちを抑えてベッドから降りて立ち上がった。 時間はいつもと変わらない、これから準備をして学校に向かえば授業には十分間に合う。体が慣れてしまえば目覚まし時計を掛けずとも勝手に目が覚めてしまう。 とてもじゃないが授業を受けるつもりはない。ただ、一晩中保健室にいる遥と早く代わらないと、またあいつ体調悪くなるからな。帰って来たんだし、少しでもあいつの負担を減らしてあげないと。 天井に向かって伸びをして体を完全に起こした。カーテンを開けると眩しい光が部屋いっぱいに広がるが、暖かさはさして変わらなかった。気分的には良いけど。 いつものように部屋を出て真っ先に洗面所に向かう。冷水で顔を洗えば二度寝する気なんてもう起きない。それから朝ご飯でも食べようかとリビングに向かった。
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