しかし日常が足りない!

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いつもと変わらないリビング。テーブルが合って、ベランダに出られる大きな窓がある。カーテンは既に開いていて、部屋は明るい。自室より光を取り込んでいた時間が長かったためか、心なしかこの部屋の方が暖かく感じた。 見慣れた景色なのに、変に緊張した。 視線は自然とベランダの方へと向かい、誰もいないのになんとなくボーっと見つめてしまう。 昨日のことが、勝手に思い出されていく。 とは言っても、あれから大したことはしていない。部屋に戻って作ってくれていたご飯を食べながら雑談をしていた。長いこと外にいたから奏多も暖かいものを飲みながら。オレがちゃんと食べ終わるのを見届けてから奏多は帰っていった。それから風呂に入って布団に包まって寝ただけだ。それだけ。それだけなんだけど……。 「めちゃくちゃ恥ずかしいことをしたような……」 いや止めよう。無理に思い出すのはやめよう。あの時はあの時なりに考えて会話していたはずなのに今になって考えるととんでもなく恥ずかしいことをしていたかもしれないと考えるのはやめよう。どうにか泣き止ませようと抱きしめたりなんかあああああああ! 頭を掻きむしる。大丈夫、セーフだ、セーフ。落ち着け。冷静に冷静に。深呼吸だ。大人になるんだ、七辻光。きっと十年後になればあれも若気の至りだったと懐かしむことができる。こんなことでいちいち動揺してたら紳士になんてなれないぞ。 よく分からない理論を頭の中で展開して、ようやく落ち着くことができた。いやしかし、隼人がこの場にいなくてよかった。この奇行すら見られていたら軽く引きこもるところだった。 平静を取り戻し、キッチンへと向かう。昨日の残り物を暖めて朝ご飯にしよう。あいつ今日のことまで見越してか、大量に作っていったからな。まぁ、美味しいし、ありがたいんだけど。 ホカホカに暖まった食事を済ませ、制服に着替える。授業に出ないとはいえ、学校に行くのだから制服の方が落ち着く。それから寝ぐせを直して、最後に戸締りを確認してから家を出た。
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