しかし希望が足りない

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白い天井。蛍光灯の眩しい光。何度か見たことのある光景。保健室だ。 目覚めたことさえ自覚のないまま手を高く伸ばし、体を起こそうとする。自分でも何がしたいのか分かっていない。ただそれでも何かしなくちゃいけないという使命感だけが体を勝手に動かして……ベッドから転げ落ちた。 「いって!」 受け身を取ることもできずに、冷たい床に全身を打ち付ける。容赦ない音と情けない声が部屋中に響く。それに追い打ちをかけるように布団が滑り落ちて来て体にのしかかる。 皮肉にもこの痛みで、何があったのか全て思い出した。 「……光?」 遥の声だ。ただ……その声は震えていた。 思う様に動かない体をどうにか動かして布団を押しのけ、声のした方に顔を向けた。 申し訳程度に開かれた仕切り用のカーテンから、エメラルドグリーンの瞳が赤くなってしまっている遥が顔を覗かせている。見つめ合うこと数秒、勢いよくカーテンが開かれる。 「光!?起きたの!?大丈夫!?本当に……心配したんだから……」 普段だったら絶対にそんな言葉を掛けて来ることなんてないのに、しかも気にすることなく涙を流しながら。……それだけのことをしてしまったんだ。 自覚はある。自覚はあるからこそ、聞かなくちゃいけない。 「……隼人は?」 遥の動きが止まった。一層大きな涙が流れ、慌てて指先で拭っていた。 遥は黙ったままオレを起き上がらせて、そしてそいつの横に立たせてくれた。 何も言わない。何も動かない。オレの隣のベッドにいたそいつは、ただ穏やかに目を閉じている。 「……隼人?」 「大丈夫、眠ってるだけだから。……でも、眠ってるだけなの」 その言葉の意味がオレには理解ができなかった。言及する前にオレに気を遣ってか、元いたベッドに座らせてくれた。 「……遥?」 「とりあえず、光が起きたこと皆に伝えて来るわね。大人しく待ってるのよ」 「お、おう……」 辛い現実から逃げるかのように、遥は早歩きで振り返ることなく保健室を後にした。 静寂が戻る。
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