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その日の仕事は少しハードだったため僕は撃退用に持ち出した竹刀を抱え眠りこけてしまっていた、その時突然、白木に揺さぶり起こされたとき見たものは、女子寮の一階のニコルの部屋のベランダに干されていた下着に見知らぬ中年の男が手をかける瞬間であった。
「今だ!行けー!」
僕はその男の背後から竹刀を振りかぶり後頭部に一撃を浴びせかけた、不意打ちを受けよろめく男に今度は白木が得意の一本背負いを食らわした。
圧倒的勝利のはずであった、後はこの男を警察に引き渡せば全てが終わる、そう確信していた。
そこへ誰が通報したのかすぐに三人の警官が走りよってきた、
(・・・?)
三人の警官はどういう訳か、下着泥棒の男ではなく僕たちを取り押さえそして警察署へと連行した。
やがて分かったのだが、その中年の男は刑事で「下着泥棒が出る」という通報を受け巡回に来ていたのだった、そして彼らは僕たちの方こそ下着泥棒として逮捕したのであった。
そしておそらく無理やり書かせたのであろう斉藤和子の被害届けを僕たちに突き付け、一晩中尋問を受けた。
僕たちの容疑が晴れたのは明け方を迎えてからであった、そう僕たちはまだ十九歳で未成年である事が会社の上司の証言で判明したため、身柄は刑事課から少年課に移され、少年課の警察官が親身に僕たちの言い分を聞き入れてくれたため僕たちは無罪放免となったのである。
釈放されたが精神的に傷着いていた僕たちに上司は、
「結果は散々だったが、君たちが仲間のためにと思って行動をとった事は立派だ。」
と誉めてくれた、その言葉で僕たちは元気を取り戻す事が出来たのだから。
「後の事は会社の方で何とかするから、君たちはこの事には首を突っ込まないように」
そう言われ僕たちはこの事件から手を引いた。
そしてこの出来事が会社中に広まった事で、僕たちが誤解されないために会社側は僕たちに“特別敢闘賞”を授与してくれ、何も知らない僕たちはそれを素直に受け取り英雄気取りでいた。
それから一年後、斉藤和子が近くの浜辺で水死体となって発見された、
上司の話では彼女は事故死であるとのことであった、その次の日僕の部屋に一通の手紙が届けられていた、差出人は斉藤和子であった、
僕は恐る恐る封を明け手紙をよんだ、そこにはただ一言「誰かを救いたい気持ちが、いつか誰かを救う時が来る」とだけ書かれていた、彼女は事故ではなく自殺だったのだ。
僕はこの事件をきっかけに会社をやめ地元に帰ってきた。
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