episode258 Lavender

27/30
39人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「あら何か証拠があって?」 当主の貫禄を増した嫌味には すかさず猫のような尖った視線を投げ反論する。 「だからあの夜俺が持って来ただろ!」 「ええ、すっかりしおれた鈴蘭をね。でもそんなの私がやった証拠にはならないじゃない」 苛立つ次男の言葉には 開き直ってうっすらと酷薄な笑みすら浮かべる始末だ。 それで――。 「君は見てないの?」 沈黙を破って九条さんが真っ直ぐ僕に向き直った。 「君に鈴蘭を食べさせた相手を見たんじゃないのか?」 薔薇色の唇が動いて 神聖な眼差しが僕を捉える度 いまだ胸が高鳴って愛してると口走りたくなる。 「僕は……」 揺さぶられた感情をグッと抑え込み僕は答えた。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!