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「あら何か証拠があって?」
当主の貫禄を増した嫌味には
すかさず猫のような尖った視線を投げ反論する。
「だからあの夜俺が持って来ただろ!」
「ええ、すっかりしおれた鈴蘭をね。でもそんなの私がやった証拠にはならないじゃない」
苛立つ次男の言葉には
開き直ってうっすらと酷薄な笑みすら浮かべる始末だ。
それで――。
「君は見てないの?」
沈黙を破って九条さんが真っ直ぐ僕に向き直った。
「君に鈴蘭を食べさせた相手を見たんじゃないのか?」
薔薇色の唇が動いて
神聖な眼差しが僕を捉える度
いまだ胸が高鳴って愛してると口走りたくなる。
「僕は……」
揺さぶられた感情をグッと抑え込み僕は答えた。
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