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あからさま敵意を孕んだ姉の瞳を見据えたまま。
僕はあの刑事に思いを馳せる。
あんたの婚約者を完全に誘惑しただろ?
今度はあんたの犬を手懐けてやる。
簡単さ。
僕が甘い声音で呼んでやったらもう
あいつ——尻尾を振りかけていたもの。
そして2度も3度も僕を殺そうとした落とし前
今回こそつけてやるからな。
言葉にはすまい。
ただ静かに口元だけで微笑んで
僕は老執事の最終兵器を口に運んだ。
「それだけ元気なら俺が何か言うまでもないな」
僕らを拒絶するように両手を上げはじめに薫が席を立った。
そして——。
「できたらいいわね。あなたの思い通りに――」
好戦的な赤いリボンを翻し貴恵も食堂をあとにした。
「さてと——それじゃ僕らは次の話をしましょうか」
僕はそれまでろくに口を開かなかった王様と
眉根を寄せたままの美しい義兄に向き直った。
そうさ。
生きてる限り常に問題はひとつじゃない。
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