episode258 Lavender

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あからさま敵意を孕んだ姉の瞳を見据えたまま。 僕はあの刑事に思いを馳せる。 あんたの婚約者を完全に誘惑しただろ? 今度はあんたの犬を手懐けてやる。 簡単さ。 僕が甘い声音で呼んでやったらもう あいつ——尻尾を振りかけていたもの。 そして2度も3度も僕を殺そうとした落とし前 今回こそつけてやるからな。 言葉にはすまい。 ただ静かに口元だけで微笑んで 僕は老執事の最終兵器を口に運んだ。 「それだけ元気なら俺が何か言うまでもないな」 僕らを拒絶するように両手を上げはじめに薫が席を立った。 そして——。 「できたらいいわね。あなたの思い通りに――」 好戦的な赤いリボンを翻し貴恵も食堂をあとにした。 「さてと——それじゃ僕らは次の話をしましょうか」 僕はそれまでろくに口を開かなかった王様と 眉根を寄せたままの美しい義兄に向き直った。 そうさ。 生きてる限り常に問題はひとつじゃない。
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