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episode258 Lavender
「驚いた……今回ばかりは本当に驚いたよ」
毛布の隙間から顔を覗かせると
見知らぬ部屋に電話を手にした椎名涼介が立っていた。
「おっと、起きるなら――ゆっくりな」
「ん……」
「かけなおすよ。お姫様がお目覚めだ」
鈍い頭痛とめまいが残っているが
僕はまだ生きている。
「誰に電話を?」
「満だよ。覚えてるだろ僕の可愛い従弟」
「もちろん。うちの可愛い執事見習い」
「気分は?」
「毎日聞くね」
「笑い事じゃない」
それも覚醒したように
ここ数日は自分が花を食らっていたことすら信じられない。
「いいよ。とてもいい」
「とてもいいだって?」
その感覚はとおの昔に捨て去られた玩具のように——。
既に記憶の深い所に眠ってしまって
どんな形をしていたのかさえ思い出せなくなっていた。
「分かってるのか?自分に何が起こったか」
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