入学と、衝突と、友達と

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ガゴッと鈍い音が響き渡る。それは、男はとっさに両腕でガードして、フェイの拳を防いだ音だった。でも、そんなガードをすれば視界を塞ぐのと同じで、男はフェイの姿を完全に見失う。 しかし、男はガードの衝撃をそのままバク転の勢いに変え、逆さ立ちになる。そして、身体をひねり、ブレイクダンスのように身体を軸に両足を振り回す。それが、旋風を巻き起こし、次の瞬間には竜巻へと変換される。追撃を回避するための豪快障壁。竜巻は周囲の土などを巻き込み、煙となって男の姿を隠してしまう。 フェイは、その様子をただ見ているだけで、何もしようとはしなかった。 ほどなくして、竜巻は消え、男の姿もなくなっていた。 しばらく、男からの攻撃を警戒したが、どうやら男は去っていったようだった。 「なんで……こんなことしやがる」 ラギはフェイと男の衝突を目の当たりにして、尋ねた。 フェイはラギの方を見ると、優しい笑みを浮かべ、近づいていく。 「なんでって、それは」とフェイは言って、ラギと同じ片膝立ちになる。「友達だからだよ」 「ふざけんな……」 「とにかく、急がないと大講義室の説明が終わっちゃうよ!」 「てめぇ、この状況で行けるわけ、んぐっ⁉」 フェイはラギの口に無理やり小瓶を突っ込む。 「それ、即効性のポーション。三人の怪我なら、数秒で治るよ」 そう言って、フェイは他の二人にもそのポーションを飲ませていく。 「おい、待て! この怪我で即効性? んなもん、あるわけが……」 ラギがそう言ったのも、束の間、倒れていた二人が気絶から目を覚まし、自分自身の超回復に不思議な顔をして立ち上がった。 「いったい、何が……?」とポールは自分の両手を眺めて、呟く。 「ポールのヒール? でも、ポールの力ではここまで完璧に回復しなかったはず? というか、そもそもそんな回復方法なんて存在は……?」 「よしっ、行ける」 「「えっ?」」と目覚めたばかりのポールとケトルが間抜けな声を出して、フェイを見た。 フェイはそれに対して、ニカッと笑う。 「もう、大講義室に行かないと! 急げ!」 フェイはそれだけ言い残して、去ってしまう。 何が何だか上手く状況を把握できていない二人と、目の前で起きた信じられない光景に固まるラギ。彼らは突然やってきて去っていったフェイをどう考えればいいのかよくわからなかった。 フェイが大講義室に戻る頃には、ラニシアとユディも捜索を諦めて戻っていた。幸い、まだ大講義室でのガイダンスは始まったばかりだった。その五分後くらいに、ラギたちもやってきて、適当に空いている席に座っていった。もちろん、彼らの服は汚れてしまっていたから、教官に喧嘩がバレて怒られてしまったわけだが。
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