入学と、衝突と、友達と

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「まったく、どうして入学初日から騒ぎが起こるのよ」 長くきれいな赤髪と凛々しい真紅の瞳が特徴の彼女は、去っていく不良たちを見ながらぼやく。それから、白髪の少年に視線を移して、言う。 「大丈夫? 怪我してない?」 「ああ、びっくりしたけど、大丈夫だ。というか、心配するなら、あっちなんじゃ?」 「三人で一人をいじめているのに、どうして心配しなきゃいけないのよ」 「いや、そうじゃなくて……」 「とにかく」と赤髪の彼女は、話を聞かずに言う。「また、あんなことがあったら、すぐに逃げなさい。それで、私に言いなさい」 「ええと、はい?」 白髪の少年は、困惑する。 「だから、このラニシア・ラングウェイがあなたを守るって言っているの。貴族騎士として、弱者を守ることが使命なのよ。あなたのような虐げられる人を守らないと、私は罪悪感で死んじゃうわ」 「はあ……」 なんか、勝手に弱いと決めつけられていて、ショックだなぁ。そう思いながら、白髪の少年は、思い込みの激しそうな目の前の女性に生返事をしてしまう。それにしても、周囲が妙に騒めいている気がする。ラニシア様? 本物だぁ? 美しい? などなど。 「ところで、名前を聞いていなかったわね。なんて言うの?」 そこで、ようやくまともな質問が来たと白髪の少年は、安堵する。 「俺は、フェイ。フェイ・ウィゾードだ」 握手を求めると、彼女は快く応えてくれた。 「よろしく、フェイくん。お互い同級生として切磋琢磨し合い、高みを目指しましょう」 「おう、これで友達だなっ、よろしく!」 「なっ……?」 なぜかラニシアは困惑し、そんなことなど気付きもせず、フェイはさっそく友達ができたと嬉しそうに先に行く。 フェイの背中と自分の手を交互に見て、ラニシアは少しの間、動けずにいた。
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