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一方で、ピアスの不良こと、ラギ・ドグマは、誰もいない校舎裏まで来て、ようやく腹を押さえた。
「……くそっ」
今まで我慢していた分、かなり苦しそうに呼吸して、悪態を吐き出す。その彼の跡をついてきた仲間の二人が心配そうに声をかける。
「なぁ、ラギ。大丈夫か?」と太っちょのポール・マンデュが不安げに尋ねる。
「まさか、俺らの挟み撃ち火炎弾を初見で躱すなんて、思ってなかったよ」と、どこか楽観的に言うのは、マッシュルームヘアのケトル・マッケーニ。「てか、どうしたの、ラギ? お腹抱えて」
「……つだ」とラギ。
「え?」とケトル。
「あいつだ」とラギは絞り出すように声を出す。「喉元突き刺したと思ったら、腹に一発殴られてた」
「え! お腹殴られたの⁉ ちょっと待って、すぐヒールするから」
ポールはすかさずラギのお腹に手を添える。服の上だけど、問題なく治療は可能だ。
「助かる」
「いや、いいよ、このくらい」
ラギはポールとケトルには弱みを見せる。それだけ信頼しているからだ。
だからこそ、あの白髪の少年がポールとケトルの魔法を見切り、二人がやられた光景を目の当たりにして、怒りを覚えた。白髪の少年だけではない、自分に対しても。
そして……。
「おいおい、まさか不良にヒール使いがいるなんてなぁ」
嫌味ったらしい声が三人に向けて放たれた。
ラギは気持ちのスイッチを切り替えて、さっきまでの苦しそうな表情を隠す。それと同時に、ポールとケトルも臨戦態勢に移った。
それに対して、さっきの声の主が姿を現す。
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