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黒い髪が肩まで伸びた軽薄そうな男。だが、その雰囲気には喧嘩慣れしたものがある。
「まあ、校舎裏の定番っちゃ定番か」
「ほざくな。定番なら、集団リンチでもしたらどうだ?」
ラギは吐き捨てるように言う。すると、男は目を丸くして、それからクスクス笑う。
「不良の真面目ちゃんかよ。まあ、そこら辺の雑魚なら、そうするだろうが……」
そう言って、男はたった一人で拳を構える。
「俺はそこら辺の不良とは違うからな」
「ふざけるなっ」
ラギはその言葉を合図にして、他の二人とともに動き出した。
ポールが男の足元に水魔法で水浸しにして、ケトルがそこに火炎弾を放つ。そして、着弾とともに一気に水蒸気が発生して、即席の煙幕が出来上がる。
「ほう、なるほど」
男の余裕のある声がする。
そんな余裕もすぐ切り刻んでやる。ラギは指をかぎ爪のように曲げて、男に向かって空を引き裂くように手を振るった。
無数の風の刃が発生し、煙幕の中の男に容赦なく向かっていく。初見で回避など不可能だ。
そう思った。
「ふんっ」
たったそれだけ。
何もないところに、正拳突きをしただけ。
それだけで、煙幕も風の刃も吹き飛んだ。
「は?」
ラギは今起きた現象に頭が追いついてこれず、思わず口に出す。
「だから、言ったろう?」と男はふっと笑って、呆ける三人に向かって言う。「そこら辺の不良とは違うと」
そんな安い挑発に、ラギは簡単に乗ってしまう。
「てめぇ、ちょっと力あるからって、調子に乗ってんじゃねぇよ」
「おいおい、その言い草じゃあ、俺を強いって認めてるのと同じじゃねぇか」
「ぶっ殺すっ!」
「やれるものなら」
そうして、ラギたちと男はぶつかる。
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