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1 配役
個人的に苛立ってしまったあのフードコートの晩餐から何日か経った頃だ。その日の授業は午後からだったので、昼過ぎに大学へ向かった。昼ごはんはコンビニで買っておいて、早めに教室に入って食べる計算だ。何せ履修している人数が多い授業で、自分の場所取りも兼ねている。
大教室に入ると私と同じ考えがやはり何人かいたようで、既に席が埋まり始めていた。
「お、ひとりか」
そんな声が降ってきたのは、私が席についてリュックの中身を確認した時だった。
「ひいっ。白崎さんも取ってたん、だ」
開口一番、可愛げないなんとも情けない声が出てしまった。代わりに『取ってたんですね』と言いそうになったのをギリギリで直したのは、我ながらよくやった。
最近あまり見かけることがなく、文化祭の準備が忙しい時期なのかと思っていたところにまさかのご本人。白崎さんは驚いている私に柔らかく微笑みながら「まあな」と相槌を打つと、話を続ける。
「先輩からこの授業楽勝だって聞いてて。テストじゃなくてレポートだけど、出せば余裕で単位くれるから、心配する必要ないってさ」
「なるほど」
何が『なるほど』だ。先輩がなんだって。全然内容が頭に入ってきてない。私はなんとか気を紛らわせようとコンビニ袋をわざとガサガサ鳴らして、おにぎり二個と申し訳程度に買ったサラダを取り出す。
「うわ、少食だな。俺なら午後持たないかも」
「普通これくらいじゃないの」
「え、それまじで言ってる? 俺もしかして食いすぎなのかな」
細身と言える自分のお腹と相談し始めた白崎さんは、流れるようにすとんと私の隣に座った。
ちょっと待って。隣?
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