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「月下、菊原と友達だったのか」
意外そうな顔をした白崎さんがちょいちょいと私の肩をつついて尋ねたが、友達なのかどうかはこちらも気になるところだ。とりあえずおにぎりを飲み込んで、微笑んでおくだけにした。
「あっ、それ。可愛いね」
白崎さんが指さしたのは、つぐみちゃんのカバンに付いていたキーホルダー。チェーンに繋がれたうさぎの小さなキャラクターが可愛らしく揺れている。
「そうかな? これガチャガチャで適当に回したんだよね、紫ちゃん」
それは駅の近くでずらっと並んでいた二百円のガチャガチャのうちのひとつ。その場には確かに私がいた。しかもあの話を聞いた直後に、だ。
もう菊原つぐみの外堀作戦とでも名付けようか。ここまで来るともう彼女の独壇場だ。
今の一言で私も見事に、彼女の舞台キャストに選ばれたわけだが、いかんせん全く嬉しくない。この発言に対する台詞はいったい何が正解なんだ。
「あ、うんと……そういえばそうだったね」
「へえ。一緒に遊びに行ったんだ?」
「そうなの。この間の委員会の帰りに買い物に付き合ってもらっちゃって」
白崎さんのまたもや意外そうな反応に対して、ほっぺたに両手を当てていかにも女の子らしいつぐみちゃんの仕草。天晴れだ。やはり場数を踏んでいる自称ベテランは違う。
「うちも今日紫ちゃんと一緒に授業受けよーっと」
そう言って、私本人の了解もなしに白崎さんとは反対の席に座った。つまり、白崎さんとつぐみちゃんに挟まれたかたちになる。これがただ何も知らない私だったら『今日はおかしな面子だな』くらいで終わっていたはずだが、そうもいかない。
つぐみちゃんは彼氏にするんだったら白崎さんがいい、という余計な事前情報があるからだ。正直気が気じゃない。
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