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『いや、それは馬鹿でしょ』
白崎さん絡みの一件をあらかた聞いたのち、私のさっきの独り言がそのままスマートフォン越しに聞こえてきた。
「あの、はい。仰る通りです……」
『今日授業入ってなかったから、会えなかったのが尽く残念だわ。てか、なぁんでそういうこともっと最初に言わないのかなアナタ』
いや本当に全く。自分で一部始終を話しておいて、だんだん声が小さくなっていく。
そして、向こうから明らかに伝わる驚きと諦めに似た声音。顔の見えない相手にも関わらず、愛想笑いを浮かべてしまった。
電話の相手は柏木凜。大学で知り合った私の数少ない友人だ。こういう話を親身に聞いてくれるのは、本当にありがたい。
『あまり面識ないから、その菊原? さんのこと悪く言いたくないけどさ』
凜はそう前置きすると、本当に言いづらそうに間を置いて、すうっと小さく息を吸う音が聞こえた。
『まあ、ちょっとやり方が汚いわ』
さっきの妙な間は何処へやら。ズバッと一刀両断する音でも聞こえてきそうな勢いだ。
『てか、紫はその白崎くんのことどう思ってんの』
「どうって?」
『好きか嫌いか。恋人になりたいかお友達になりたいか、とか』
「こいびっ」
舌噛んだ。
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