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先程の男性、白崎 菖悟さんと話すようになったのは、今から二ヶ月ほど前だ。それもたまたまのことで。
その日の授業は、くじ引きによって決められたグループワークを行うことになっていた。私はこういうのが大の苦手。ランダムに決められた上に、話したこともない人たちと意見交換なんて、私の人見知り発揮条件ピッタリすぎる。本当に憂鬱で仕方がなかった。
「それでは席を移動してください」
無慈悲にも教授に促され、班になった人達と渋々ながらに机を囲んだ。
「えっと、じゃあ軽く自己紹介してからそのあと意見言っていくことにしようか」
司会進行役をかって出た史学科の男子がたどたどしく口を開いた。彼から時計回りに回っていく。
「国文学科三年の白崎菖悟です」
隣に座った学生が同じ学科だったことに驚いた。この授業は他学科が多く、アウェー感に苛まれていたから尚更だ。
「えっ……と、なんかひとこといるかな」
「じゃあ、白崎くんって彼女いるんですかぁ?」
なんだその質問。グループワークを合コンかコンパと思っているのか。まあ、合コンもある意味グループワークか……などと納得しかけたが今は大学で授業の一環。危ない危ない。心の中で悶々とした私に気づく様子もなく、対面に座っている女子二人が先程のイケイケな感じで囃し立てる。
「っと、その」
口ごもって目線をそれとなく逸らすところを見ると、今どきにしては珍しく初心な反応。明らかに染めたと思われる栗毛色の短髪。小さなピアスを耳に開けて、白地のシャツの上にカーキ色のワイシャツのような薄いジャケット。見た目で判断してはいけないとは分かっているけど、正直意外だった。
「可愛いぃ」
きゃあっとわざとらしいこの歓声は私から見れば可愛くない。と思ってしまう私が一番可愛くないのはよく知っている。
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