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「白崎くん絶対モテるっしょ」
「いや、そんなこと、ないですよ」
「無自覚さんなんだあ、ポイント高ーいっ」
白崎さんへの応酬は司会役の人に阻まれ、事なきを得た。隣をちらりと見ると安堵の溜息を密かにもらしていたところだった。
「あの」
あまりにも不憫で、私はつい隣のその人に声をかけてしまった。初めましての人に自分から声をかけるなんて前代未聞。いきなり声をかけられた彼は、明らかにビックリした様子で身体をこちらに向ける。
と、ここで声をかけたはいいが、何と言えばいいのか全く考えていなかった。私は一瞬だけ頭をフル回転させる。何を言われるのかと言わんばかりに怯えてるような顔をする彼に、努めてにこやかに言った。
「た、大変そうですね」
小声のあと、すぐにやらかしたと思った。あまりにも他人事すぎる。日本語の中にはもっとこう、相手を気遣う適切な言葉があるはずだ。この私と彼の間の微妙な空気感に逃げ出したくなる。
「ほんっとですよぉ。こういうの苦手であまり喋れないんで……」
彼は同じく声を潜めてふにゃりと破顔した。そんな単純なことでも不覚にもときめいてしまった。我ながら本当にチョロいと思う。
それにしても、言ってた割には初対面の私に対して饒舌に話すではないか。無自覚というのはあながち間違いではないのかもと思った。
この日を境に、大学で見かけると声をかけてもらったりするようになった。
最近は『休みの日は何をしているのか』だとか『美味しいパン屋を見つけた』だとか他愛のない話も増えたがそれに嬉しくなっている自分がいるのも事実だ。
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