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浅草さんと予期せぬ合流後、今度は白崎さんと浅草さん、そしてつぐみちゃんの後ろをついて行く。『関係者以外立ち入り禁止』とは一体なんだったのか、もはや開き直って体育館まで来てしまった。
「学校こんなに変わってると思わねえじゃん」
「普段来てないからだろ」
「超真面目だから毎日来てる」
「はいはい、どうだか」
白崎さんが心底呆れたと言わんばかりに、浅草さんの軽口に答える。時々笑いながら、言葉を交わしているところを見ると、だいぶ仲いいんだなあと勝手に思った。友達といる時の白崎さんはこんな感じか、と知らなかった一面をぼんやり後ろから眺める。
「白崎くん、それじゃ浅草くんが可哀想だよ」
「んー。いや、こいつにはビシッと言うとこは言わないと」
「そうなの? じゃあ浅草くんには私からも一緒にビシバシ言わなきゃっ」
つぐみちゃんがそんなことを言いながら鮮やかに二人の会話に混じり始めた。当の本人、浅草さんは「二人してひっでえ」と文句をこぼす。でも言葉の割には淡白な感じだから、たぶんもう慣れっこだ。
それにしてもつぐみちゃんはこれ、両手に花ならぬ、両手に……なんて言えばいいんだろう。凜とどんな例えが良いか、割と真剣に話し合っていると突然白崎さんが振り向いた。
「月下達はどうする? 後夜祭」
言われてから思い出した。そういや後夜祭なんてものがあったんだった。答える前に私は凜に確認を取ろうとした。
「ごめん、紫。あたし明日朝早いんだわ」
「え、そうなの。じゃあ、私も帰ろうかな」
「……いんや」
両肩をがっちり掴まれれば、勢いをつけて向き合わされる。
「紫は残った方がいいと思う」
「え」
何を急に。
「明日なんか用事あるの」
「あ、え、な、ないけど」
「それだったら残りな。うん、残った方がいい」
噛み締めるように数回うなづいた後に言われると、そんな気がしてくる。「私は残ります」と伝えると「そっか」だけが返ってきた。続きがありそうで、白崎さんの口が何かを言いかけたが直ぐにつぐみちゃんが駆け寄ってきて、見えなくなった。
「嬉しいっ。紫ちゃんと後夜祭まで居れるんだね」
私はちょっと捻くれてるから、つぐみちゃんのこの言葉を上手く受け止めきれなかった。
正直凜が居ないのは心細いけど、白崎さんがいるから楽しいのかも? なんてちょっと浮かれた考えがぼんやり頭に浮かんだ。
夕方頃になると凜は人助けヒーローよろしく、そのまま帰って行った。
そのあとの話を少しだけ。
凜のことだから、色々考えて提案してくれたんだと思う。確かに凜と一緒に夕方で帰っていたら、私の気持ちがもっと大変だったのは確実だ。
だけど、後夜祭のことはあまり思い出したくない。
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