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6 幕間
あの留守電を聞いてしまったからには、向かわなければ。自分の変なところが律儀で、嫌気がさした。昨日の授業をサボった罪悪感に囚われてるのが一番の理由かもしれない。
いや、そもそも授業だから行くのは当然だけど。相変わらず足が鉛のように重い。
白崎さんの伝言を聞いたあと、また座布団に八つ当たりをした。物に当たるなんて非常によろしくないのは頭ではわかっているつもりだけど、どうも気持ちがざわつく。電話越しに聞こえてきた女の人の声の主は、きっと可愛らしくパステルブルーのワンピースをひらつかせてたに違いない。あの声を思い出して、私の中のざわつきがまた一層大きくなった。
結局、折り返しの電話もかけなかった。病は気からとも言うし、白崎さんのお言葉に甘えることにした。慣れない頭を使いすぎたのか、急に重くなった。八つ当たりの終わった座布団を今度は枕にする。案の定そのまま眠ってしまったようで、ハッと気づけば外は真っ暗になっていた。
傍らのスマートフォンがまたピコピコ光っている。また白崎さんからかと怯えたが、いわゆる『鬼電』とかはしなそうなタイプに見える。どうにかこうにかホーム画面を表示した。
『生きてる?』
『心配になって連絡してみたけど』
メッセージの差出人は『凜』とある。心の底から安堵の息が漏れた。凜とはメッセージアプリの方を交換しているので、たまに連絡を取り合う。
『生きてる。ありがとう』
『帰ってきたら留守電入ってて驚いた』
ふたつのメッセージに返信すると、思いのほか早くアクションがあった。
『寝てたでしょ』
『うそ』
『エスパー向いてるかも』
本当に、凜にはお世話になりっぱなしだ。
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