6 幕間

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「なんで、そんなこと」  ようやくそれを口にする。蚊トンボレベルの声でも、この距離では充分な声量だった。 「そんなことじゃないよ。俺にとっては」 「へ」  何かがおかしい。 「俺、月下のことは譲れなくてさ」  なあ、ともう一度顔をぐっと寄せられたが、もう無理だ。ふいっとそのまっすぐな目から逃げた。 「俺じゃだめか?」  はて。今、なにがどうなってる。確実に言えるのは、もう私のキャパシティが臨界点だったってことだ。だめか?ってなんだ。どういう意味で聞いてるんだ。私が都合のいいように考えていいとしても、とても苦しい。  勝手にぼろぼろと涙が零れてくる。こんな時、凜がいてくれたらな。ないものねだりばかりしてもしょうがない。 「そんな、こと聞かれたって」 「ん?」 「つぐみちゃんに告白されてたじゃ、ないですか。しらさきさん」  完全に泣きじゃくり始めた私に、ぎょっとした様子で目をまん丸にする白崎さん。そりゃそうなりますよね、すみません。謝ろうとしたが上手く言葉にするまでに時間がかかった。 「だって、つぐみちゃんが。文化祭の時、倉庫で、雨降ってて、その時に、あの」  代わりにこんな本音ばかり口から飛び出てくる。ほら。私は本当に可愛くない。気持ちと行動が全然伴わない。白崎さんが一瞬合点がいかない様子で、首を傾げていたがすぐに察したようで「えと」と掠れた声を出した。 「文化祭のって。もしかして、やっぱり聞いてたのか」  私は何度もうなづいた。めそめそと弱々しいこれぞ悲劇のヒロインって感じがする。さすがにやりすぎだろう。いくらつぐみちゃんでもここまではしないはずだ。でも私は今、演技で泣けるほどの気持ちの余裕は無い。本当に辛い。それだけだ。 「月下。違うんだあれは」 「ごめんなさい。本当にごめんなさい。聞きたくないんです」  最後の最後まで私は可愛くなかった。
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