0 舞台袖

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「まあ、そんなこととかいろいろあって、うちはしばらく彼氏はいいかなあって思ってるんだけど」 「いい考えだと思うよ」  しばらくいい、というか。よくもまあ公衆の面前で堂々と恋愛経験が豊富そうな顔をして語る人だなあというか。細かいところにツッコミを入れていればキリがないので、とりあえず黙っていた。彼女の考えは尊重しよう。  心にゆとりを持とうと密かに仕切りなおした私が、もう一度うどんを啜りかけたその時だった。 「そんでさ。うち最近、白崎くんと仲良いんだよね」  げほっ。  デジャヴかと思った。が、さっきと同じ事を繰り返していると自分が一番良く分かる。間違いなく二度目の咳き込みだ。もしかしたら彼女は、私にうどんを食べてほしくないのかもしれない。  何より元カレの話の流れからの、白崎さんの名前に過剰反応した自分に一番驚いている。
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