7 カーテンコール

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 どっちにしたって、なんとも答えられなくないかその問いは。ましてや私が。つぐみちゃんがどんな返事を求めているのか皆目見当もつかない。きっと何を言っても不正解な予感がする。  私が隣で小さく呻き声をあげても、当の本人は未だ不思議そうな顔だ。私を見たところで、解決はしないと思うけど。なんて、つぐみちゃんにとっては野暮な忠告か。 「うち的には頑張ってたつもりなんだけどなあ。せっかく紫ちゃんにも手伝ってもらったのにね?」 「うあー」  なんとも言えない代わりに、覇気のない返事もどきが出た。きつい。かなりきつい。学校までの道のりってこんなに長かったっけ。 「そういうとこだと思いますけど」  救世主は突然、後ろからぬっと現れた。 「り、凜っ」 「おはよ」  自分で言っておいて、漫画みたいな反応だなと思った。それでも感謝の気持ちがぐんと突き抜ける。  毎度低血圧気味の凜が話しかけてくるなんて、『ありがたさ』以外見当たらない。ましてやあのつぐみちゃんに。 「紫ちゃんのお友達の」 「その節はどうも。大変お世話になりました」  つぐみちゃんが言葉に詰まりながらも声をかけた。それにしても、なんともビジネスチックな挨拶だ。おそらくこの二人は文化祭以来のご対面じゃないかと思う。 「白崎さんの彼女になる人は、菊原さんよりきっとずっといい(ひと)ですよ。たぶん」  凜はまだ眠いのか目を擦っていたが、どことなく毅然とした声音だった。完全に面食らったつぐみちゃんは、ぽかんと口を開けた。 「行こ、紫」  お構い無しと言わんばかりに、後ろから私のリュックを軽く押す。私の腕は今まで圧力が嘘だったかのようにするりと抜けた。
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